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「昨日定期連絡がなかったな。何してた?」
俺が助手席に座ると、少し不機嫌な社長が睨んできた。
「すいません」
俺が差し出すパソコンを無言で受け取る。
今回の仕事の都合上、社長もいつものスーツ姿ではなくてクルマも軽。
スーツ姿の男が軽に乗ってぼうっとしていたらサボっているサラリーマンにしか見えない。
社長が確認している間、俺は手持ち無沙汰になってやることがなかった。
「どうですか?」
俺の言葉を、ゆっくりと手で遮る。
いつもは後ろに流している髪を下ろすと若く見える俺のボス。
かっこいい社長に会うのが、俺の仕事のモチベーション。
俺が男とセックスできる体に変えたのは社長。
仕事によって、ターゲットが男でも対応できるようにと言われた。
公私混同な気もしたがそれなりに役になる。
おかげできのう山中に暴行されたときも痛みを感じずにすんだ。
全部お見通しなんだろうか、今日の社長は不機嫌で、まわりの空気が凍っている感じ。
「研究チームに渡そうか」
無言だった社長がようやく口を開いた。
安堵した俺は無意識に左の首筋を手で撫でた。
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