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三話 氷花の村
氷花はこの日もせいれいとしてきせつをめぐらす仕事をお父さんとしていました。
今年で氷花はもう十七才になっていました。そろそろ、お年頃だといえます。けど彼女は恋や縁談の話にはきょうみをしめさず、ずっと仕事を優先していました。妹のつららも十三才で姉の氷花を心配しています。お母さんも氷花が全く異性にかんしんがないのでどうしたものやらと思っていました。
「……つらら。氷花に良い相手が見つからないかしらね」
「そうね。姉さんにも縁談はきているんだけど。全くきょうみがないみたいよ」
「弱ったわねえ。もう十七才になったらお嫁にいってもおかしくないのに。どうにかして恋人をつくってもらわないと。わたしも安心できないわ」
お母さんの言葉につららも考え込みます。どうしたものやらと二人で頭をかかえたのでした。
夜になり氷花はお父さんとともに家に帰ってきました。お母さんはつららとでむかえます。お父さんが先に着替えにいくと氷花に「あとで女どうしで話したいから」と小さな声でいいます。お母さんの真剣な表情になにかを読みとった氷花はこくりと頷きました。その後、氷花も手を洗ってから着替えにむかったのでした。
夕食が終わって氷花はお母さん、つららの三人でいまにて話し合いました。
「……氷花。もうおまえも十七才。そろそろ、お嫁に行ってもいいお年頃だというのはわかっているわね?」
「……わかっているわ。もしかして。話したいっていうのは縁談のことなの?」
「あいにく、そうよ。おまえが全く縁談にきょうみをしめさないから。わたしも心配になってね」
お母さんはそう言うとふうとためいきをつきます。氷花も本当はわかっていました。自分がお嫁にいかなかったらお父さんにもお母さんにもめいわくをかけるということにです。それでも氷花はつららが心配で後一年くらいは側にいたいと考えていました。
「氷花。今日から一年くらいはゆうよをあげるわ。その間に絶対に恋人か婚約者を見つけなさい。一年以内に見つけられなかったら。その時は無理にでもお父さんとお母さんが見つけた男の人と結婚してもらうわよ。いいわね?」
「わかったわ。お母さんの言うように恋人をみつけます。けどわたしもつららが心配なの。せめて後一年くらいは側にいてあげたいと思っていたのよ」
「……そう。つららが心配だったのね。悪いわね。でも早めに恋人をみつけないとおまえが売れ残ってしまうのが。母さんはいやだったのよ」
お母さんはそういうと氷花の頭をなでます。ひんやりしているけど。優しいなで方に氷花は身をゆだねます。つららはそのこうけいを見てつんと鼻の奥がいたくなるのを感じたのでした。
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