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 さっき長谷川君に事前に教えてもらった私は、どこか落ち着いていた。けれどもどういう風の吹き回しで母は許してくれたのだろう。 「最近のあんた、楽しそうやったもんな。高校三年間の中で一番ええ顔しとるわ。それにええ友達に恵まれたやん」  私は黙って聞いていた。続きを目で促す。それを察した母は続けた。母の両眼には優しい眼差しがこもる。 「条件がある。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家に、居候させてもらうんやで? お祖父ちゃんとお祖母ちゃんからも承諾済みや」 「うん!」  自分の耳を疑う。奇跡だ。喜びが自分の全身を通り抜けた。顔に嬉しさを隠しきれず、喜色満面を浮かべた。嬉しさで胸がきゅーっとする。初めて味わう喜びだった。
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