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歩き始めて早々に私の足元が覚束ないことに気づいた主任は「悪い、触るぞ」という一言と共に私の肩を抱くように手を回した。
「主任……
コート…濡れちゃいます…」
「いいから。」
黒原主任の手は大きくて骨張っているのがコート越しからでも分かった。
身体は冷え切っているはずなのに触れられている部分だけが熱を帯びていく。
「すみません…」
「謝んなくていいから。」
さっきまで私がいた道をさらに一本裏に入っていく。
その筋の角にあるクリーム色のマンションがどうやら主任のお家らしい。
「ここ。ちょっと待ってな。」
主任は素早く傘をたたみ、番号を打ち込むとオートロックは解除され自動ドアが開いた。
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