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獄ノ骸:或る小説家の証言
僕は小説の取材旅行の中で、東北の或る場所で不思議な少女に出逢った。
さんと名乗った少女は、全身包帯だらけだった。
彼女から聞いた話は、魅惑的であり、蠱惑的であった。
僕は、彼女の許可を得て、この物語を執筆するに至った。
ここに綴った物語は、彼女がバケモノではなく、人間だという証明の物語だ。
翌年、旧桑原村地区で生まれた子供は、全員透明な肌だったという。
一部地元紙では、妊娠中に流行した新型ウイルスがDNAに影響を及ぼしたと報じたが、真偽の程は定かではない。
ただ、その報道は、誤報のお詫びを掲載することもなく、データベースからも削除されている。
僕は、彼女に最後のインタビューとして、見解を求めた。
「原因が新型ウイルスだったのか、それとも母の死の灰が影響を及ぼしたのか、分からない。
だけど、あの夜、降り注いだ母の灰は天から無数の蟲が舞い降りたかの様に綺麗だった」
――その後の彼女の行方は、杳として知れない。
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