獄ノ惨:禁断の部屋

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獄ノ惨:禁断の部屋

小屋の間取りは簡素で特殊だった。 玄関の鍵はからしか施錠できない造りだった。 窓はあったが、頑丈な格子が嵌め込まれ、外には出られない。 つまり、わたし達は自分の意志で逃げ出せない。 今までは通学と言う大義名分で外出を許可されていただけだ。 学校帰りに逃げ出すことなんて考えもしなかった。 わたしは外の世界など知らない程子供であり、 また、母は人質同然だったのだ。 小屋の造りは、豪雪地帯特有の高床式。 雪に埋もれない代わりに、床下からの冷気が半端ない。 冷暖房としてエアコンが付いているが、冬は室外機が凍る。 一時間暖房運転し、二時間霜取でストップする。 それの繰り返しは、単調で楽しみなど一つもないわたしの生活に似ていた。
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