獄ノ終:バケモノの証明~天ノ蟲~

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獄ノ終:バケモノの証明~天ノ蟲~

「だからね、人間なんてバケモノなのよ」 わたしは、自嘲気味に(わら)う母から、の原因を教えられた。 遺伝性の皮膚病――白子症(アルビノ)の突然変異種――。 白いどころか、透明なのだ。全身の皮膚が。 だから、血管や筋肉などが剥き出しの様に見える、醜い姿。 本当はニンゲンなのだ。 バケモノなどではなくて。 「ごめんよ、母ちゃんがだから……。 さん、一緒に死のうか? これ以上生きてても辛いだけだろう?」 毎日、母娘心中(おやこしんじゅう)(ほの)めかす様になったのは、二人同時に男の相手をしてからだった。 それまでは、自分だけが酷い目に遭っていると想い込めた。 娘は、仕事部屋でも、話し相手をしているだけだと。 だけど、二人同時に仕事をさせられたことで、母としての辛い現実を受け止めないといけなくなった。 優しい母は気が触れたのだ。 皮肉にも、これこそが、母が人間である証明で、相手がバケモノである証明なのだ。
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