獄ノ終:バケモノの証明~天ノ蟲~

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どうして、わたし達が同じ名前(さん)なのかは、母も知らないことだった。 いずれ桑原家の当主になる総一郎なら知っているかも知れない。 わたしは、彼が来るのを待った。 数日後、ようやく総一郎がやってきた。 『お守り』を受け取ってから今日まで、わたしは多くの男達に仕込まれ、妖艶さに磨きがかかっていた。 現代の日本では、わたしの年頃の娘と肉体関係を持つことは犯罪だ。 その禁忌(タブー)もまた、強烈なスパイスとなるのだろう。 しかも、桑原家の後ろ盾があれば、世間にバレないのだ。 世間の相場は知らないが、あの町長のことだ。 安い金額でわたし達を提供し、外部で遊興させない様にしているだろう。 一族が開墾した農地を耕させ、収穫と収入を与える。 旧桑原村地区にあるパチンコ屋や飲み屋は、全て桑原家が経営している。 住民が手にする現金も、結局は一族の収入源となり還ってくる。 わたし達もその一つだ。 しかも、秘密の共有により、裏切ることが出来ない。 毎年、年貢の様に搾取されているが、という快楽で麻痺させている。
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