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獄ノ爾:二人の『さん』
わたし達が棲み付いているのはプレハブ小屋だ。
小屋は、現役町長・桑原の自宅敷地内にある。
町長の父親も祖父も代々に亘って、この地方自治体のトップに君臨している名家だ。
歴史を辿ると、平安時代にまで遡るという蝦夷の権力者一族。
ここに囲われているのは、地元以外の人間に、わたし達の存在を知られたくないからだ。
わたし達が食事を与えられ、生きていられるのは、悔しいが桑原家のお陰なのだ。
だから役場でも、面と向かっては非難されないし、学校でいじめを受けることもなかった。
何故なら、現役町長の孫――未来の町長――である総一郎が、わたしの同級生だから。
もし、わたしが生徒や教師からいじめを受けたなら、総一郎はすぐに父や祖父に知らせるだろう。
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