獄ノ終:バケモノの証明~天ノ蟲~

3/14
前へ
/72ページ
次へ
「さん……」 「総一郎。今日は抱いて欲しいの」 わたしは、総一郎を誘惑した。 いや、幻惑と言った方が適切だった。 前回、彼はデッサンだけで何もしなかった。 だから、わたしがリードした。 美しいわたしは、男にとって麻薬だ。 誰も私の魅力には逆らえないだろう。勿論、総一郎も。 「僕も、今日は君を抱きたい。いや、僕を壊してくれないか?」 「何かショックなことでもあったのね?」 良いわよ、総一郎。 男が受けるショックなんて、わたしに比べたら、かわいいものでしょうね。 望み通り、壊してあげるわ。 わたしが生きる為に。 わたしの存在の証明の為に。 わたしは彼の耳朶を甘噛みしながら、囁いた。 町長に盗聴されないボリュームで。 「壊されたいなら、の秘密を教えて。総一郎なら知ってるんでしょう?」 わたしの両手は、総一郎の敏感な部分を探り当てる。 初めて触れるというのに。 総一郎は、興奮と戸惑いが入り混じった表情で、低く呻いた。 わたしは、胸のチクチクする痛みを、体の奥を濡らすことで誤魔化した。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加