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「さん……」
「総一郎。今日は抱いて欲しいの」
わたしは、総一郎を誘惑した。
いや、幻惑と言った方が適切だった。
前回、彼はデッサンだけで何もしなかった。
だから、わたしがリードした。
美しいわたしは、男にとって麻薬だ。
誰も私の魅力には逆らえないだろう。勿論、総一郎も。
「僕も、今日は君を抱きたい。いや、僕を壊してくれないか?」
「何かショックなことでもあったのね?」
良いわよ、総一郎。
男が受けるショックなんて、わたしに比べたら、かわいいものでしょうね。
望み通り、壊してあげるわ。
わたしが生きる為に。
わたしの存在の証明の為に。
わたしは彼の耳朶を甘噛みしながら、囁いた。
町長に盗聴されないボリュームで。
「壊されたいなら、さんの秘密を教えて。総一郎なら知ってるんでしょう?」
わたしの両手は、総一郎の敏感な部分を探り当てる。
初めて触れるというのに。
総一郎は、興奮と戸惑いが入り混じった表情で、低く呻いた。
わたしは、胸のチクチクする痛みを、体の奥を濡らすことで誤魔化した。
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