65人が本棚に入れています
本棚に追加
室町時代、雪深く貧しい村にさんの先祖が流れ着いた。
当時の村長は彼女の体を白く塗り、匿った。
彼女は、天涯孤独であり、独特な容貌から行く先々で迫害を受けていた。
世を儚んだ女は、死出の旅路に北を目指し、里に下りず、山をひたすら歩いていた。
現在でもなお雪深く、スキー場は春からオープンする様な地域だ。
当時、年間の2/3以上が雪に閉ざされる貧しい村では、穀物の栽培もままならなかった。
行き倒れた異形の女は、村長の介抱を受け、元気になった。
彼女は博学だった。
村の現状を聞いた女は、自生していたヤマグワに目を付け、村長に植林を薦めた。
ヤマグワの成長はとても早い。一年間で4メートル成長することもある。
不整の鋸葉は効能豊かなお茶に。
強い繊維を持つ樹皮は提灯や和傘の材料(和紙)に。
甘く熟した果実は生でも美味しく食用に。
根の皮は喘息や肺病などの生薬に。
硬く美しい木材は箪笥や琵琶・三味線などの工芸品・楽器などに。
そして、養蚕業――桑の葉を食べるカイコによる絹の生産――で村は潤っていった。
村長は、村と自らの名を桑原と改め、彼女を蚕と呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!