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貧しい者が、分不相応な富を手に入れると、待ち受ける結末は悲劇である。
人格者であり、優しかった村長は、次第に利権を独り占めし始めた。
村にあるヤマグワの権利は全て自分のものであり、村人は小作人と位置付けた。
異を唱える村人は、家族もろとも見せしめに殺し、亡骸は肥料とした。
村人が減っても、産業を発展させた桑原村は、食い詰めた近隣寒村からの入植希望者で補填が出来た。
荘園領主となった桑原は、財産が増えると共に、猜疑心が強くなっていき、
いつしか自分の産婆であった、村のまじない師に依存するようになった。
ある日、まじない婆より、さんの正体がオシラサマであると託宣を受けた。
オシラサマとは、東北地方で土着信仰されている家神・蚕神である。
繁栄をもたらす一方、もし禁忌に触れ、家から出られると没落すると伝えられている。
桑原は、その日のうちに、さんの両脚の腱を切断し、動けない様にした。
そして、次のオシラサマを祀る為に、手籠めにし、孕ませた。
翌年、さんから生まれたのは、透明な皮膚を持つ女の子だった。
こうして代々、桑原家でさんを囲うことが始まったのだ。
長い歴史の中で、男児が生まれたこともなく、正常な肌の女児が生まれたこともない。
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