獄ノ終:バケモノの証明~天ノ蟲~

9/14

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「処で、さん、この部屋、暑すぎないか?」 確かに熱かった。暑いというよりも。 話しに夢中で気が付かなかった。まさか! 異変に気付いた総一郎が、外ではなく、部屋への防音扉に手をかけた。 金属製の把手が肌を灼く、ジュッという不快な音が反響した。 「まずい、さん、外へ出るんだ!」 総一郎は、火傷していない方の手でわたしを引き、もう一つの扉から外へ出る。 焦って、上手く開錠が出来ず、手こずった。 外の冷気で、体の芯まで急激に冷える。 総一郎は、自分のコートを私に羽織らせて、鞄を抱えなおした。 振り返ると、小屋の奥――わたし達の居住部屋――から火の手が上がっていた。 逃げられない様に格子が嵌められた窓は割れ、紅蓮の炎が舌を這わせていた。 母の仕業だとすぐに分かった。 エアコン交換前のつなぎで調達してもらった石油ストーブ。 わたしが仕事部屋に入った後、灯油を撒いたのだろう。 爆発音がして、屋根が弾ける。 わたしは茫然と大きくなる炎を見続ける。 母の声は聞こえなかったが、安否は絶望的だろう。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加