64人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「フハハ。流石は俺の孫だ! 総太郎とは違うな!」
「父さんのことを悪く言わないでください。父さんはバケモノじゃない。あなたと違って」
出来損ないの蚕の繭の様な、白い吐息が二人の間で応酬されている。
「僕は全て知ってしまった」
総一郎は、鞄から取り出した古い日記帳の様な物を町長に見せた。
「それを読んだのなら、分かるだろう? 桑原家はこうして代々護られてきたんだ。
オシラサマは我が一族の繁栄の神だ。娘のさんが残っていれば安泰だ」
「どうして、あなたは悪しき因習を断ち切ろうとしなかったんだ?」
「感傷に浸り、バケモノに情けをかけるな! この馬鹿垂れが!」
町長は、総一郎の顔面を強く殴った。
わたしは、母を喪ったパニックもあり、ただ見ているしかなかった。
殴られた総一郎は、倒されることなく、町長を睨みつけた。
「痛くないよ。さんが受けた仕打ちに比べたら、全然痛くない。
父さんのことも、こうして力づくで止めたんだろ?
だけど、あなたはもう、年老いた。僕には勝てないよ。悪いけど」
最初のコメントを投稿しよう!