64人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
唇を切った総一郎は、血を拭おうともせず、わたしの方を振り向いた。
「さん、僕の父さんと君のお母さんは、互いに惹かれ合っていたんだ。
父さんは、さんの呪縛を終わらせようとして、あの人に詰め寄った。
揉み合いの結果、打ち所が悪く、半身不随になったんだ」
「それはいつの話しなの?」
「はっきりとは分からないけど、君が生まれる前だ」
「そんな……酷い……」
「だから、少なくとも僕の父さんは君の父親ではないんだ」
子供が作れない体になったということか。
好き合った男性と肌を重ねられなかったことは、母にとって幸せだったのか、不幸だったのか、わたしには想像すらつかない。
その時、わたしはあることに気づいてしまった……。
最初のコメントを投稿しよう!