第10話……退院前日

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第10話……退院前日

特に何事もなく、龍も俺も産後は順調で。 予定通り無事退院の日が決まった。 午後一で医院長に最後の診察をしてもらい、今後について色々諸注意とアドバイスを受けた。 診察台で子宮の戻り具合と悪露の状況を確認され、横になったまま医院長の話を聞くことになった。 「北條さん、出産後の子宮の戻りもいいし、特に心配する事はないみたいですね。何か気になる事がありますか?」 「あー、出産後って、次の発情期とかの周期はどれ位でくるものなんでしょうか?俺、まだ番になってなくて。次回以降で…その。」 「あぁ、そうなんですね。おめでとうございます。授乳してる間は発情期がこないですね。オメガ男性の場合、母乳が出るのは一ヶ月から二ヶ月程度です。発情期のタイミングは、身体の回復具合に寄るところが大きくて身体が調えば発情期のバイオリズムが分かるので、出来たら定期的に周期外来を受診してください。うちの周期外来は結構優秀なので評判いいんですよ。」 確かに、このクリニックに初診で来た時、随分混雑してたな。オメガ男性なんて、世の中には少数派なのに、このクリニックにはやたらとごったがえしてたから面食らってはいた。 たぶん抑制剤の処方や周期外来での来院が多かったのだ。 「授乳が終わる頃、うちの周期外来を受診してみてください。かなり正確な周期が分かるはずです。」 「ありがとうございます。」 「あと性交渉は一ヶ月検診で診察してから判断しますので、それまではしばらくお休みください。」 「わ、わかりました。」 ていうか発情期こないならする気ないけどな…。 「うちのクリニックは小児科もありますから、今後も宜しくお願いします。」 「分からないことだらけなんでこっちこそ宜しくお願いします。」 医院長はにっこり微笑むと、電子カルテになんか入力しつつ、もういいですよ~と促した。 よいしょっと診察台から降りようとして、少しよろけた。 あれ。 目の前が暗い。 「北條さん?ん?脳貧血かな……はい、大丈夫ですよ。ゆっくりもう一回寝てください。」 手を添えられて再び診察台に横になる。 電子カルテ見ながら、血液検査の数値を確認する医院長。正常範囲内とはいえ、少し貧血気味だったようで。 「赤ちゃんはクリニックで預かりますから、今晩はゆっくり身体を休めてください。これから先はなかなかゆっくり出来なくなりますからね。」 しばらく診察台で休んだ後、スタッフさんに肩を貸してもらい、自分の部屋へ戻った。 部屋には悠斗(はると)くんがいて、しきりとスマホをタップしてた。仕事はどうしたんだろう。 「大丈夫。ちゃんと仕事してきましたから。」 「ならいいんだけど。ごめんね。明日龍も俺も退院なんだけど。明日は来れそう?午前中なんだけど。」 「もちろんです。仕事の調整できてますから、安心してください。」 「うん。ありがとう。助かる。」 いよいよ、明日。 退院です。
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