第11話……退院

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第11話……退院

午前中。受付に退院手続きをしにロビーを抜けると、医院長とすれ違った。 「あ、北條さん。待って待って。今日退院でしたよね。最後にもう一回、診察しとこうか。すぐ済むよ。」 通りすがりのスタッフさんを呼び止めて、第3診察室空いてたよね、北條さん診察するから通してあげて~って声を掛けてスタッフルームに入って行った。 昨日最後の診察をした後、部屋に戻ると看護師さんがきて、採血をしてった。 診察で脳貧血を起こしたから、念の為血液検査をしてくれたようだ。 「えーと、北條優一さん。血液検査の結果は……うん。」 やっぱり少し貧血気味だったけど、まだ正常範囲内。とりあえず鉄剤を処方してくれた。 他は問題ないし、龍のほうも小児科のほうでお墨付きをもらってるから、会計済ませて悠斗(はると)くん待って、退院だ。 部屋のソファで龍を抱えて、悠斗(はると)くんを待つ。 履けるかなと心配したんだけど、妊娠前のスリムジーンズがなんとか履けた。 ちょっとお腹まわりがタプタプしてるけどね。 龍はぐっすり寝てて、俺も眠くなる。 んあ? 気づいたら悠斗(はると)くんが横に座ってた。 迎えに来てくれたんだー。 「来てくれてありがとう。じゃ、行こうか。」 「はい。とりあえず一週間、休みとりましたからゆっくり子育てしていきましょ?」 明日から一人で子育て~って考えてたから、すごく気を張ってたんだけど。 見透かされてたのかな。 クリニックを出て、医院長に見送られつつ俺は龍と悠斗(はると)くんと共に退院した。 何気に医院長さん俺と龍によく絡む。今日は暇なのかと思ったら、退院する親子は余程緊急な診察がない限り、必ず見送りする事にしてるらしい。そこら辺の気遣いもこのクリニックが評判いい所以なのかもしれない。 空は青く澄んで爽やかな風が気持ちよかった。
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