第12話……番の印をつけるまで

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龍はお試し保育が楽しかったようだ。 それはそれで良かったような寂しいような、俺は複雑な心境だ。 能天気な俺に似たのかな……。 確かに俺の小さい頃も、初めての幼稚園で帰りたくないと大泣きしたと親に聞かされている。 まあ、これで発情期の龍の預け先も決まったな。 発情期の予定日が出ているとはいえ、体調云々で予定日が前後する事を考えて、予定の一週間前からマンションを出ないように悠斗(はると)くんから言われちゃった。 買い物は階下のスーパーにネット注文すると、コンシェルジュが玄関横の宅配BOXに届けてくれる。BOXは家の中から受け取れるので、出る必要はない。 悠斗(はると)くんも、俺が発情するまで仕事を目いっぱい入れてるらしく、かなり忙しそう。 ただし発情期が始まれば、必ず切り上げて来れるような手配がされているらしい。 腕時計型の発情監視装置も付けることになった。 見た目も機能も通常の腕時計なのだが、いざ発情期に入ると、悠斗(はると)くんのスマホに位置情報と共に(しら)せが入る仕組みになっている。 大抵のオメガは突発的に発情すると動けなくなる場合が多く、助けを呼べずに何らかの事故に巻き込まれることも多い。 なのでこの腕時計型の発情監視装置はなかなかのアイデア商品なのである。 これもまだ一般には出回ってないらしく、プロトタイプらしい。 裏には俺の名前が刻んである。 かなり完成度が高く、俺好みのデザインだ。 悠斗(はると)くんは、こういう商品をどこから仕入れてくるんだろうか。 それにしても、最近悠斗(はると)くんの様子が変。 気配を感じて振り返ると、悠斗(はると)くんがねっっっとりした熱い眼差しで俺を見てる。 いや、ねっとりした眼差しは前からも感じたことはあったけど、最近は以前に増して目つきが恐い! どうしたのかな。 あぁ、それと。 耳鼻科で慢性副鼻腔炎も治したよ。 授乳期間が終了して周期外来と並行してね。 慢性的に頭痛がしてたらしく、今は頭が軽く、匂いにも敏感になった。 悠斗(はると)くんのアルファな香りも、かなり香っている。 やっぱりとてもスパイシーな香り。 こんなに濃厚な香りだったんだね。 と言っても、やっぱ俺運命とかなんとかがわかんなくて困ってる。 なんとなく悠斗(はると)くんの感情が分かるようになったし、ホントに安心感のある匂いで近くにいるとすぐ眠くなっちゃうんだけど。 これは運命の相手だからなのかな。
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