第12話……番の印をつけるまで

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※ 俺を優しく抱きしめて、囁く悠斗(はると)くん。 「覚悟はいいですか?」 「もちろん。」 間髪入れずに即答する。 (ついば)むようなキスが降ってくる。 額、鼻先、右瞼、左瞼。 どうやら少し涙が出ていたのか。 舐め取られるような仕草だった。 この一週間程部屋から出ない生活で、俺はTシャツに短パンという色気のない恰好。 悠斗(はると)くんは仕事帰りのスーツで、ネクタイを外しただけだった。 俺がジャケットのボタンを外そうと手を延ばすが、俺の手を優しく払い執拗に顔中にキスをしながら悠斗(はると)くんは自分でボタンを外し、そのまま背中に手を回してジャケットを脱いだ。 キスは継続中。 今度はワイシャツの小さなボタン。 俺の覚束無い手じゃ外せない程小さなボタン。 ぷちっ、ぷちっ、と片手で器用に全て外すと、一際濃厚なキスを落としてくれる。 またキスの合間に、肌着代わりの白のTシャツもガバッと毟るように脱いだ。 舌を絡めてくるから、応えていると、酸欠になってきた。 わかってる。鼻で息しろって言うんだろう? 麻痺して忘れちゃうんだよ。 「んはっ……はぁっ。」 軽く喘いでもう一度ディープなキスを。 頭を撫でてくれる手が気持ちいい。 悠斗(はると)くんの上半身は裸に。 俺も。 Tシャツを(まく)る。 唇が一瞬離れるのを待って、首からシャツを引き抜く。 俺からTシャツを取り上げポイと床へ投げた。 指でズラした短パンとボクサーパンツを両膝をばたつかせて下へずり降ろす。 ベッドから落ちていく短パンとボクサーパンツ。 お互いの鼻息と衣擦れだけが寝室に響く。 相当貪って、わけも分からなくなりかけた頃、悠斗(はると)くんが次のモーションへ。 次に悠斗(はると)くんが目を付けたのは、俺の右胸。既に出産を経験し、息子に吸われた胸だ。 間延びした乳首なんて、見られたくない。 「いやっ……はず…かしいからっ!」 身を捩るがビクともしない。 悠斗(はると)くんの顔を見ると、無表情で俺の胸を視姦している。 じっくり見て……かぶりつくようにクチを開けて迫る! 音を立てて吸い込む。 もうミルクなんて出ないのに。 なんのプレイだよ。 コロコロと舌で弄っているとそこも甘い痺れとなって下が疼く。 左胸も同様だ。 さっきのキスといい、貪り方が執拗だ。 ここまでに、俺の下半身は全く触れて貰えない。 今までの行為の中で、俺は悠斗(はると)くんの服も雄にも、自分の股間にも手を延ばそうとしたのだが、その度に軽く払いのけられてしまった。 まだ、触るな! という事だろうか。 俺はマグロになって、悠斗(はると)くんのしたいようにさせてあげた方がいいのか? 少し戸惑いつつ、涙目で悠斗(はると)くんを見上げたら。 「くっっっ……!」 何か堪えるような、短い叫びを上げて俺の両膝裏を持ち上げた悠斗(はると)くん。 まだ夕方の、日が落ち切っていない赤い陽射しが、レースのカーテンの隙間から俺の持ち上がった両脚に光って当たる。 が、それも次第に光を失い、薄暗闇に落ちていく。 後孔に(ついば)むようなキスをしたかと思ったら、熱い舌先がグググッと入り込んできた。 「うわあああああ……。」 目を瞑り、ゾクゾクする感覚をやり過ごす。 そんなところにそんなことするもんじゃないって。 頭の中でそんな言葉がこだましている。 舐められ、良がるオメガの後孔。 蜜がトロリと這い出た気がした。
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