第2話……報告

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第2話……報告

隣人の友人男性ハルト。 それだけの情報しか知らないにも関わらず、発情期に自宅の玄関先で助けられ、発情期の相手もして貰った。 しかもノリに乗ってしまい、自分から ゴムは要らない!中出しして!孕ませて! なんぞと今までついぞ言ったことも無いのに、そんな事まで言い放ち、淫らに求めてしまった。性欲うっすいんじゃなかったのか俺! 覚えてないなら、相手を責められようものだが、生憎全て自分からの言動と行動を覚えており、後悔先に立たずの心境である。幸いなのは、項は噛まれておらず、まだ番の契約までは至っていなかった。 オメガとアルファの発情期の妊娠率は非常に高い。 いつも三日で終わる発情期が、一週間と長引き、更にはアフターピルを飲むタイミングを逃し、なんとなくわかっていたような今回の妊娠。 本当にハルトという人物には、申し訳ない気持ちしかなかった。 発情期が終わり、改めて話を聞くと、会社の取引先で、軽く繋がっている事が判明した。そこで俺の名前と顔を見知っていたという。 ハルト…北條悠斗(ほうじょうはると)というらしい。25歳と俺より若い悠斗(はると)くんの名刺にはホクトグループという有名企業の第一企画部とあった。確かに俺はこのホクトグループの第二企画部の営業担当で、何度か企画部へと足を運んでいる。第二の部長と懇談する時に、第一企画部の人とも接触していたのかもしれない。 とりあえず連絡先を交換し、さあもう別れようと腰を上げた時、 「実は一目惚れなんです。織田さん。」 と悠斗(はると)くんから告げられた。 胸がきゅんと締め付けられる感覚。 かぁぁぁぁぁぁ……。 首から上に熱が集中する。 オメガとは言うものの、儚い容姿をしているわけでなく、至って普通の俺。 何処に一目惚れ要素が?と疑った。 実用的な何も飾らない首輪も相まって、友人からも全然性欲そそられねーなと言われる始末。悪かったな。 会社で俺を見初めてくれた後、偶然にも友人宅の隣人が俺で。 まさかの発情期初日に出逢うとは……。 悠斗(はると)くんも相当に驚いたらしい。 俺としては、あんまり結婚とか番とか縁遠い事だと思ってたから、この劇的な発情期はあまりにも青天の霹靂である。その後も悠斗(はると)くんは、週に一回は俺の家へ顔を出してくれた。あまり自分を語らない穏やかな青年は、俺の目にも好青年であった。あの発情期に置いて、ラット化することもなく、落ち着き払った精神力で、俺を優しく激しく、感じるままに抱いてくれた事が、本当に嬉しかった。 とにかく、体調の悪さから平日に休暇を貰い妊娠が確定した今日。今からすべきは、悠斗(はると)くんへの報告。 スマホのアプリからメッセージを送る。 すみません、仕事中。 終わってからで構わないので連絡ください。 ……すると五分もしないうちに、悠斗(はると)くんからの着信。 『どうしました?織田さん、体調どうですか?』 体調が悪く病院を受診する事は伝えていたので、心配してくれていた様子。 「はい、大丈夫です。すみません、仕事中に。終わってからでよかったのに。」 『いや、気になってそれどころじゃないから……病院どうでした?』 「……すみません、妊娠、してました。」 『あ……そうでしたか。』 「……はい。それで近い内にうちに来ていただけないかと。」 『もちろん伺います。今夜大丈夫ですか?』 「はい、助かります。すみません、呼び出しちゃって。」 それから軽く会話をして、電話を切った。 とりあえず連絡はした。 妊娠を報告した時の悠斗(はると)くんの返事が、微妙に落ち着き過ぎていて、もしかして喜んでないのかなー、そうかもなーと思いはしたが、悠斗(はると)くんは一目惚れと言ってくれてるし、俺は特に悠斗(はると)くんに不満もないし、結婚とか番とか、深くは考えてないのだけど、悠斗(はると)くんとならなんとかなる気がしてる。歳下なのに凄く安心感のある人物なのは間違いない。こんな優良物件、なんで俺のところに転がり込んできたんだろうか。 もちろん、もし妊娠を喜んでいないのならば、独りで産み育てるしかないのだが。そうなればそうなった時だな。なんて……普通妊娠でナーバスになるはずだろうに、呑気な両親に似たのか、楽天家の血筋を発揮していたのである。 気がかりは会社の事。イレギュラーに妊娠してしまったから、営業職を手放して事務方に異動願いを出して、産休育休か。はたまた育休からの営業職に復帰できるか。辞めるという選択肢は今のとこないんだが、どうしたものかと考えながら、妊娠でやたらと眠い瞼に抗えず、ベッドでまどろむことにした。まだ時間は14時。妊娠してなくても眠くなる時間帯だ。レースのカーテンだけひいて薄雲の日差しが、柔らかく包んでいた。
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