第39話……変化

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変化(12) 再び海岸線を走っている。 この先は表示された看板によると、港町だ。 港の横の大きな工場の駐車場に入って行く。 お、直売所がある。 「ここ?直売所に寄っていい?」 「はい。あ、前に取り寄せ品の試供品、甘露煮のパウチとか。持ち帰りましたよね。ここのです。気に入ったのあれば、買って来てください。今、あんまり売れすぎてネット販売は中止してるみたいなんです。ここに来ないと買えないんで。」 「甘露煮!思い出した。あれ美味しかったよね。じゃ、ちょっと見てくる。」 「はい。僕はこっちの事務所にいますから。」 「はーい。」 楡崎水産直売所という看板。 にれざき? 工場のスレートにはNIRESAKIとあった。 にれさきさんか。 直売所に入るとセンサーが反応したのか、来店を告げるメロディが流れたが、店員さんもお客さんもおらず、店内は色々な水産加工品が並べてあった。 俺の好きな小魚の甘露煮……あ、あった。 へー。 もらったやつはサンプル品だったから、なんにも書いてなくて何の魚だったのか知らなかったけど、イワシの甘露煮だったんだね。 結構、黒く煮詰まってたから、わかんなかったんだよ。 他にも缶詰とか色んな種類がいっぱいある。 「いらっしゃいませ。」 「あ、ども。」 買い物カゴに甘露煮をごっそりあるだけ入れてると、奥から店員さんらしき人が出てきた。 なんか色白で綺麗な男性。 黒のスラックスに薄緑の作業着のジャケット。 胸には楡崎水産の文字。 やっぱり店員さんなんだね。 他にも気になるヤツを数点入れて、レジに行く。 イワシの甘露煮が大半を占めてる。 おみやげに悠里さんとかに持って行こうと思ったし、うちでの消費……半端ないから。 「あ、甘露煮お好きなんですか?」 「えーと、はい。ごはんとまらなくなって困りますけど、家族みんな好きです。」 「ありがとうございます。あ、こっちのも……お試しにどうぞ。柚子の皮がアクセントに入ってて、美味しいですよ。新商品だったんですけど、もう一つしかなくて、奥に下げてたんですけど。」 バーコードの所に購入済のテープを貼って買い物袋に入れてくれた。 「え、いいんですか?」 「どうぞ、わざわざ直売所にいらしてくださったので、おまけです。」 「ありがとうございます。嬉しい。」 「こぉら!まて─────!……すいません!藍翔(あいと)さん!店舗に行きました!捕まえて!」 買い物が終わる直前。 遠くで誰か叫んでる。 店内に小さい台風が入り込んできた。 コケるんじゃないかと思うくらいの、たどたどしい走り方でかわいい子が、俺の足にすがってきた。 「お?どうした?」 財布をしまい、小さい子を受け止める。 俺の顔を見てないけど、離すまいとすがって来るもんだから、小脇を(かか)えて抱っこした。 すると、ビタ─────っと首にすがりついて。 首、クビ、ぐえー絞まる! 「コラ!涼矢(りょうや)!お客さんに抱きつくな!」 「ふぇ?」 子供が変な声を出して、顔を上げた。 近くで見てもかわいい子。 キョロキョロして、それから俺を見た。 「どした?」 子供の顔を覗き込むと、こてんと俺の鎖骨の所に頭を寄せてきた。 かわええ。 「この子、ここのお子さんですか?」 店員さんに訊ねると、顔を赤くした店員さん。 「お客様すみません、私の息子です。」
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