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急変(2)
どこかでピッ、ピッ、ピッ、ピッ……というゆっくりした機械音が響き、消毒薬の匂いに紛れて、濃厚でスパイシーな落ち着く香りが香ってくる。
気がついたのは、白い天井も白いカーテンも白い空間全てが赤く染まる、いかにも夕刻の病室だった。
まだ覚醒したばかりで、身体が上手く動かないながらも、必死に目線を彷徨わせるとベッドの足元に誰かが顔をうつ伏せている。香りから、絶対悠斗くんだと思う。
「悠斗く…ん。」
しっかり声を出したつもりだったけど、掠れてしまい大きな声にはならなかった。
それでも悠斗くんの耳には届いたようで。
ビクッと肩が揺れたかと思うと。
ガバッと顔を上げた悠斗くん。
わわ、ヒゲ濃いよ。
なんか痩せコケた?
人相変わってちょっとコワイ悠斗くんがいた。
「優一さん、優一さん、優一さん!」
枕元に近づいて軽くおでこに頭をつけてきた。
ん?なんか頭に巻いてある?
自由に動く左手で頭を触ると、包帯が巻いてある。
右手には点滴が繋がれ、指先には洗濯バサミのようなものが挟んであり、たぶんバイタル測定中?
ナースコールをしてかけつけた医師に、診察を受けた。
深夜スタッフさんが来て、急な吐き気で嘔吐したあの時、あのタイミングでくも膜下出血を起こし、緊急手術となった。
深夜の悠斗くんとのメッセージのやり取りで、あれから俺はスマホを置きそのままにしている間に、何度メッセージを送っても返事がなく、心配した悠斗くんはこの病棟のナースステーションに連絡したらしい。
結果的には最高のタイミングで俺を救ってくれた。
だったのだが、なかなか目を覚まさず、一週間も眠りこけていたようだ。
そりゃ悠斗くんも心配しただろう。
今診察を受けたが、顔、手足にも麻痺などは残っておらず、一週間ぶりの寝起きで頭があまり回ってないが、話も出来たので後遺症は無いみたいだ。
とはいえ外傷性のくも膜下出血を起こしたので、一、二ヶ月の入院と検査、リハビリをしなくてはならないらしい。
手足は動くとはいえ、一週間も寝てたら筋肉落ちてて歩くのも大変だ。
夕方目を覚まして、診察を受けた後、悠斗くんは龍のお迎えに行ってくれて、龍とも久々に会うことが出来た。
まだ入院とはいえ、これで本当に大団円でいいんだよな。
早くうちに帰りたい!
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