第17話……明るい未来

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明るい未来(3) 前回の検診から一週間。 今日も検診とスイミングの予定で。 6時起きで朝から悠斗(はると)くんの出勤前の準備をしてる。 ふぃー。 もうね。 のっしのっしって擬音がつきそうな俺です。 頑張って歩いてるんだけど、今日はやたらと足の付け根が痛くてね。 まだ違うと思うんだけど、胎動を感じる度に子宮がきゅうっと固くなる。 腹に手を当てて立ち止まってる俺を見て、悠斗(はると)くんは何か感じたのか。 「…今日、俺が龍送ります。」 「ん?大丈夫だよ?歩くのもいいお産になるから。」 「……。」 黙ったまま立ち上がり、ダイニングから出て行く。 しばらくして戻ってきた悠斗(はると)くんは、片手にスマホを握ってて。 「…優一さん、今日会社休みになりましたから。」 「え。仕事大丈夫なの?」 「大丈夫です。送迎も検診もスイミングも、僕付き添いますから。」 そんな甘やかさなくてもいいのに。 まだまだ37週だよ? 「とりあえず朝ごはんにしよ。」 ごはんに味噌汁。 ハムエッグとサラダ。 龍にもついであげて、みんなで食べる。 今日は園のみんなで公園まで散歩するんだって。 天気も良くて良かったなー、龍。 悠斗(はると)くんはスーツを脱いで、ジーンズに着替えた。 ふぅー。 今玄関の三和土(たたき)には椅子が置いてある。 広くてバリアフリーな玄関で、妊夫の俺が靴を履いたり脱いだりするのには、椅子は必須。 悠斗(はると)くんが俺のスニーカーを履かせてくれる。少し緩めにしてる紐を、少し絞めて結び直してくれた。 「さ、行こうか。」 龍はこども園の制服に黄色い帽子。 園かばんに水筒。 俺はリュックを背負うつもりで手に持つと、悠斗(はると)くんが当たり前のように受け取って背負ってくれた。 「じゃあ、行ってきまーす。」 三人で声を合わせて。 下に降りるとコンシェルジュの橋田さんが忙しそうに働いてた。 他の住人も出勤や登校で、続々とマンションから出かけて行く。 「あ、北條様、行ってらっしゃいませ。」 あ、気づかれた。笑 「行ってきまーす。」 悠斗(はると)くんと俺が、龍の手を引いて歩く。 歩いてるとぐにぃーっと胎動がしたところで龍の手を離し、立ち止まる。 足を伸ばしてリラックスしてんのかな。 すごい腹がゆさゆさ揺れる。 ふひゅー。 腰に拳を当てて、俺も伸びをする。 腹の皮が突っ張らかって、つりそう。 龍に追いつくようにちょっと早足で近づくと、悠斗(はると)くんが振り向きながら声をかける。 「優一さん、走んないで!」 「大丈夫だってー。」 「じゃ、行ってらっしゃい!」 園で龍に背伸びしてバイバイして、今度は悠斗(はると)くんと二人、病院まで手をつないでゆっくり歩く。 「優一さん、今日だいぶ張ってるでしょおなか。」 「うん、前駆陣痛かな。本陣痛はまだまだだと思うけど。おーっと!」 「ほら、あぶない!」 ははははは。 ごめんごめん。 普通に縁石につまづいた。笑 「ごめんごめん!大丈夫!」 「ほら、僕いて良かった。」 「うん。悠斗(はると)くんにはいつも助けてもらうねー。」 「違いますね。僕のほうがたくさん幸せ貰ってますからね。すごい助けられてるの僕だ!」 「えー、こんな鈍臭いし、なんもしてないよー。」 「本当は…僕、謝らなくちゃいけないんです。」 病院に着くまで、悠斗(はると)くんが謝らなくちゃいけない告白を聞いた。 悠斗(はると)くんはかなり真剣に落ち込んでたんだけど。 「…………ぷ。」 あぁっはっはっは~! なーんだ、そんなこと! 「えー冗談だったんだ!アマゾン!」 「ごめんなさい!」 「良かった!ご両親、日本にいるの?」 「……います。」 「なーんだ。それなら良かった。」 「……怒らない?」 「なんで?」 「結構大嘘ついたから。」 繋いだ手をギューってして。 ニコニコ笑って許した。 許したっていうより、怒ってないけど。 逆になんで怒ると思うんだよ! ご両親に会うのは、まだまだ先のようだ。 まぁいいよ。 でもさ。孫が二人になっちゃうよ!笑 早い方が嬉しいんじゃない? 笑いながら病院の自動ドアを二人で通った。 ゆっくり歩いて時間通り。 悠斗(はると)くんちょっと待っててね。 ふぅー! グリュグリュっとまた胎動! うっ、膀胱当たった! 検尿の為に朝から我慢してたのに! トイレ横のカップとペンを取り、記名するとペンを置いてトイレに走った! むちゃくちゃ内股の、色気なしの妊夫! 漏れるぅ!
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