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明るい未来(3)
前回の検診から一週間。
今日も検診とスイミングの予定で。
6時起きで朝から悠斗くんの出勤前の準備をしてる。
ふぃー。
もうね。
のっしのっしって擬音がつきそうな俺です。
頑張って歩いてるんだけど、今日はやたらと足の付け根が痛くてね。
まだ違うと思うんだけど、胎動を感じる度に子宮がきゅうっと固くなる。
腹に手を当てて立ち止まってる俺を見て、悠斗くんは何か感じたのか。
「…今日、俺が龍送ります。」
「ん?大丈夫だよ?歩くのもいいお産になるから。」
「……。」
黙ったまま立ち上がり、ダイニングから出て行く。
しばらくして戻ってきた悠斗くんは、片手にスマホを握ってて。
「…優一さん、今日会社休みになりましたから。」
「え。仕事大丈夫なの?」
「大丈夫です。送迎も検診もスイミングも、僕付き添いますから。」
そんな甘やかさなくてもいいのに。
まだまだ37週だよ?
「とりあえず朝ごはんにしよ。」
ごはんに味噌汁。
ハムエッグとサラダ。
龍にもついであげて、みんなで食べる。
今日は園のみんなで公園まで散歩するんだって。
天気も良くて良かったなー、龍。
悠斗くんはスーツを脱いで、ジーンズに着替えた。
ふぅー。
今玄関の三和土には椅子が置いてある。
広くてバリアフリーな玄関で、妊夫の俺が靴を履いたり脱いだりするのには、椅子は必須。
悠斗くんが俺のスニーカーを履かせてくれる。少し緩めにしてる紐を、少し絞めて結び直してくれた。
「さ、行こうか。」
龍はこども園の制服に黄色い帽子。
園かばんに水筒。
俺はリュックを背負うつもりで手に持つと、悠斗くんが当たり前のように受け取って背負ってくれた。
「じゃあ、行ってきまーす。」
三人で声を合わせて。
下に降りるとコンシェルジュの橋田さんが忙しそうに働いてた。
他の住人も出勤や登校で、続々とマンションから出かけて行く。
「あ、北條様、行ってらっしゃいませ。」
あ、気づかれた。笑
「行ってきまーす。」
悠斗くんと俺が、龍の手を引いて歩く。
歩いてるとぐにぃーっと胎動がしたところで龍の手を離し、立ち止まる。
足を伸ばしてリラックスしてんのかな。
すごい腹がゆさゆさ揺れる。
ふひゅー。
腰に拳を当てて、俺も伸びをする。
腹の皮が突っ張らかって、つりそう。
龍に追いつくようにちょっと早足で近づくと、悠斗くんが振り向きながら声をかける。
「優一さん、走んないで!」
「大丈夫だってー。」
「じゃ、行ってらっしゃい!」
園で龍に背伸びしてバイバイして、今度は悠斗くんと二人、病院まで手をつないでゆっくり歩く。
「優一さん、今日だいぶ張ってるでしょおなか。」
「うん、前駆陣痛かな。本陣痛はまだまだだと思うけど。おーっと!」
「ほら、あぶない!」
ははははは。
ごめんごめん。
普通に縁石につまづいた。笑
「ごめんごめん!大丈夫!」
「ほら、僕いて良かった。」
「うん。悠斗くんにはいつも助けてもらうねー。」
「違いますね。僕のほうがたくさん幸せ貰ってますからね。すごい助けられてるの僕だ!」
「えー、こんな鈍臭いし、なんもしてないよー。」
「本当は…僕、謝らなくちゃいけないんです。」
病院に着くまで、悠斗くんが謝らなくちゃいけない告白を聞いた。
悠斗くんはかなり真剣に落ち込んでたんだけど。
「…………ぷ。」
あぁっはっはっは~!
なーんだ、そんなこと!
「えー冗談だったんだ!アマゾン!」
「ごめんなさい!」
「良かった!ご両親、日本にいるの?」
「……います。」
「なーんだ。それなら良かった。」
「……怒らない?」
「なんで?」
「結構大嘘ついたから。」
繋いだ手をギューってして。
ニコニコ笑って許した。
許したっていうより、怒ってないけど。
逆になんで怒ると思うんだよ!
ご両親に会うのは、まだまだ先のようだ。
まぁいいよ。
でもさ。孫が二人になっちゃうよ!笑
早い方が嬉しいんじゃない?
笑いながら病院の自動ドアを二人で通った。
ゆっくり歩いて時間通り。
悠斗くんちょっと待っててね。
ふぅー!
グリュグリュっとまた胎動!
うっ、膀胱当たった!
検尿の為に朝から我慢してたのに!
トイレ横のカップとペンを取り、記名するとペンを置いてトイレに走った!
むちゃくちゃ内股の、色気なしの妊夫!
漏れるぅ!
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