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明るい未来(6)
朝からこども園に龍を送り、病院行って、スイミングやって、そしてまたマンションまで歩いて汗かいたし…風呂は気持ちいい!
腹がぷかりと浮いて軽い。
しかもこの湯は浅く張ってあり半身浴。
病院に着いたのが13:25
内診し、入院の案内をされて直ぐに入浴。
そして軽く一時間。
陣痛も回数を重ねる毎に、じわりと痛みが増してきた。まだ妊娠37週でもう暫く出産まで猶予があると思ってたのに、本格的に出産に挑んでいる自分に、まだ気持ちが追いついてない。
風呂の縁に掴まりうつ伏せに身体を浮かせてみたり、悠斗くんを座椅子代わりに後ろから抱きしめて貰ったり。
のんびりまったり現実逃避中。
だがしかし。
手がしわしわしてるし、頭がふわふわしてきた。
そろそろ上がるか。
痛みが引いてる今!と思い、ざばーん!と勢いつけて風呂から立ち上がると、中田さんが声をかける。
「あぁあぁ、こら!まてまて!ほら!言えば補助するから、いきなり立つとあぶない!」
中田さんと悠斗くんに両脇から腕を掴まれ風呂から出る。
中田さんがバスタオルで水気を拭い、悠斗くんが入院着を身につける手助けをしてくれる。
ぐぐぐーんっとさっきまでとは比べものにならないくらい強い陣痛がきて、立ってられない!
服も中途半端なまま膝をつく!
「いやっ……待っ…て、ふぅーん!ぅぅぅっ!」
声を殺せず呻きながら四つん這いになる。
「内診するよー!」
俺が四つん這いになってるところに中田さんがこれ幸いと、容赦なく内診にくる。
躊躇なく中田さんの男らしい指がぐりぐりと子宮口に入ってくる。
ニチニチッグチュッとなんともイヤらしく聞こえないでもない音がするもんだから、頭の片隅に羞恥が過ぎる。
「あぁあああああああぁあ!!」
「お!8cm!マジか?もう一回確かめさせて!」
15:06
いやいや!内診が痛いから!
はよ終われ!いてー!
中田さんがナースコールで状況を説明し、スタッフ増員と担当医を呼んでる。
「こりゃかなり進行が早いぞ!」
中田さんの独り言がコワイ。
「呼吸、優一さん!」
悠斗くんが落ち着いて教えてくれる。
浅い息に気がつく。
あ、そか。
腹式呼吸、腹式呼吸。
ふぅーーーーーーーーーーーっ。
ふぅーーーーーーーーーーーっ。
あたたた。
「ちょ……待っ……なかたさっ、体勢…変えたい!」
「いいよォどうしたい?」
「あぁああぁあ!」
「ほらほらー、呼吸呼吸!忘れないよ!」
中田さんスパルタ!
「は……は、るとくん!きて!」
「…優一さん。。。」
脇を二人に抱えられベッド脇によろよろと移動してきて、悠斗くんにベッドに座って貰い、跨って首に抱きつく!
スタッフも増え、今朝検診をしてくれた栗田先生が担当医として入ってくれた。
栗田先生は軽く診察した後、再び助産師の中田さんに任せた様で後ろで様子を見てる。
他のスタッフさんも何か機械や器具を揃えながら産まれる準備をしてる。
はぁぁぁーーーーーーーーーーっ。
はぁぁぁーーーーーーーーーーっ。
「内診するよォ」
はああああーーーーーーーーっっっっ!!
ヌチュ…ガパッ……ガパッ……。
中で手が動いてるのを感じる。
そんなに開いてるのか。
「おし!全開!15:45」
中田さんの言葉と同時に腹をゆさゆさと揺すられた。その刺激で子宮がギューって収縮を始める!
ああああああああぁぁぁーーーーーーっ!!!
座位が、ズンッと子宮口に胎児の重みがかかる所為か、ドンドン陣痛が進んでる様に思ってた。やっぱり全開!
声が次第に大きく、切羽詰まったものになる。
悠斗くんの腕が腰に回り、強めに摩ってくれる。
「は……はる、とくん、それ、きもちいっ!」
俺が囁いたと同時に悠斗くんからいい匂い!
ぶわわっと、なんか香りが強くなった?
ぐりぐり頭を擦りつけ首に抱きつく!
匂いに酔いそう!
痛いのに気持ちよくなってきちゃった!
ナニコレ!
ふぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!
ぬぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!
ぱつっ!
あ!
「い…まっ!ぱつって!あぁぁぁっ!!」
「あ!破水だね。大丈夫!えー破水、15:56!」
中田さんの言葉に、破水した事を知る。
破水したんだ。
もう夕方の4時。
てか、自宅の玄関で張りが陣痛かもって時間測ったのが12:42で、三時間ちょっとでもう産まれるとか……マジで頭おっつかねー。
「中田さん!コレもう産まれるんですよね?!」
悠斗くんが俺を抱きしめたまま、中田さんに訊く。
ふぅーーーーーーーぅぅぅぅぅぅぅぅ
「うん、もう産まれるねー!排臨!16:02!」
俺の背後にしゃがみこんだ中田さんが、俺の尻を覗きつつ言ってる様だ。
「は…悠斗くん、龍っお迎えどうする?ふぅんっ、いったた!」
もう龍は間に合わないか……。
夕方の延長保育は可能だから、最悪悠斗くんに電話して貰えば預かって貰える。
「龍の延長保育、頼んで貰える?悠斗くんにはここにいて欲しいからっ…つつっ!」
この状態で悠斗くんに居なくなられたら困る!もう悠斗くんは手放せない!
ふっうーーーーーーーーーーーーぅぅぅぅ!
ふぅっうーーーーーーーーーーーー!!!!
ううーーーーーーーー
「お!16:15発露だな、旦那さん!ほら、手袋はめて、ここ!ここ触って!」
ヒソヒソと中田さんが悠斗くんに囁く。
背後でゴソゴソやってる。
うぅーーーーーーーーーーーーーーっ!
「優一さん上手上手!園は心配しないで!もう延長保育は電話済みですから…あ!頭!出てる!」
悠斗くんが俺の尻に軽く手を当ててる。
尻から500円玉程度、頭が出始めてるらしい。
え。俺も触りたい!
「お、俺も……っ!」
うーーーーーーーーーーーーー~~っ
ホントになんか出てきてる。
なんかって我が子なんだが。
それにしても、いつ延長保育の電話したんだ?
陣痛かもってなってから、ずっと付きっきりでそれどころじゃなかったよな。
「あ!またきた!くわっ!」
「ほらほらほらー!息んで!北條さん!」
ふぅーーーーーーーーーーーぅぅぅぅん!
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