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第8話……告白
悠斗くんがねっとりした異様に艶かしい目線で俺を見てる。
どこかその辺のアイドルとか若手俳優連れてきたって、負けやしないんじゃないか?ってくらいカッコイイ……。
そう思ったら、頭がクラクラする。
見つめられ過ぎて俺、穴があくんじゃないか?
まだ貧血気味だからかな。
ボーっとしてる。
「優一さん」
「気づいてます?」
「僕と優一さん、運命の番だって」
…………はい?
「気づいてなかったでしょ…………はぁぁぁ」
そう言ってふかーくため息をついた悠斗くん。
そもそも論なんだけど。
運命の番って都市伝説って思ってたし。
運命の番と出逢ったら、その場で分かり合えるとか言う話じゃなかった?
俺、気づいてないんですけどー。
俺、気づいてないって事は、違うんじゃね?
顔に出てたのか……。
ジト目の悠斗くん。
「優一さん、あなたと僕。運命の相手ですよ。ホクトグループのフロアで初めて逢った日に香ったフェロモンで気づきました。ほら、覚えてませんか?ホクトグループの社内で、フェロモン騒ぎがあったじゃないですか。あの日の事、覚えてませんか?優一さん。」
確かに、そういう騒ぎ、あったな。
俺がホクトグループの営業を引き継いで初めて訪れた日、同じフロアでオメガのフェロモンがダダ漏れしてると騒ぎになっていた。もちろん俺は同性の香りは分からないし、主に慌てていたのはアルファの社員だったから、俺は気にもしてなかったんだけど。俺が打ち合わせする企画課の部長もアルファだった事から、騒ぎが落ち着くまで暫く待たされる羽目にはなったけど。
それがなんか関係してる?
「あの日…先に優一さんのフェロモン嗅いでた僕はあのフェロモンに当てられなかったんです。」
「イヤイヤ……あの日の事覚えてるけど俺、あの日はフェロモンなんか出てないし。悠斗くんのフェロモンなんか気づいてないよ?そばにいた?」
「はい。優一さん、俺の存在全然気づいてないのも分かりました。てか。あの日優一さん。完全に鼻詰まってましたよね?」
あーそれ言う?
俺……慢性副鼻腔炎なんだよね。
いわゆる蓄膿症。
逆に鼻が通ってる時が珍しいくらい。
もう慢性化しちゃってるし、そんなに生活に支障は感じないんだよね。多少の匂いは感知できてるはずなんだけど。
あはははは……。
「僕のフェロモン少しは感じてくれてます?悪くは思ってないとは思うんですけど、それ運命の相手だって……全然気づいてくれてませんよね。」
やたら寂しそうな悠斗くん。
イヤイヤ……今言う?それ。
妊娠中だって……言うタイミングあったろうに。
「あの……今度優一さんの発情期が来たら」
「是非。番になってください。」
珍しく悠斗くんが喋ってる。
番になるのは全然構わないんだけど…本当に俺って君の運命の番なのかな。
気づかないパートナーなんて。ホントにいる?
確かに安心感あって落ち着くんだけどさ。
少し自分でも、違和感はあった。
あの発情期になって悠斗くんと玄関先で出逢った日。
発情期とはいえ悠斗くんと顔を合わせただけで腰抜かしたり。
いつもは一回前を抜いちゃえば、とりあえず収まるはずなのに、抜いても抜いても収まらなかったし。
三日で終わる発情期が一週間も続くなんて、俺には異常事態だ。
まあ、これまでアルファと発情期を過ごした事なかったから、コレがアルファと発情期を迎えた時の反応なのかな……なんて思ってた。
とりあえず、耳鼻科で副鼻腔炎の治療してきたら気づけるかな?
っていうか、ギャグ漫画かよ。
そんなオチある?
運命の相手に気づかんヤツいるとか。
無口な悠斗くんがこんだけ話してくれたのは、コレが初めてで…。
もっともっと俺たち話さなきゃいけない事、たくさんあるんじゃないかと思う。
とりあえず返事しとかないとな。
「悠斗くん、俺と番になってください。こちらこそお願いします。」
そう言ったところで…ノックの音がして、病院のスタッフさんが俺達の愛息を連れてきてくれた。
3126gのほっぺが落ちそうなベイビーだった。
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