12月16日

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「なんかあった?」 私がなつの顔を覗き込んで言うと、なつはちょっと驚いた顔をした。 「え、なんで?なんにもないよー」 「嘘。顔に出てるよ」 即答で切り返すと、なつはちょっとびっくりした顔をしてから笑った。 「なんもないって〜!」 「ほんとに?なんか無理してない?」 私は引き下がらずに質問を続ける。 なつは少しの間何か考えてから、ため息をこぼした。 「適わないなぁ、青って他人のこと見てないようでしっかり見てるよねぇ」 困ったように笑いながら、なつはぽつぽつと話し始めた。 「なんか最近、全然吹けないんだよね……音が出ないの。本当は自分が原因だってわかってるんだけど、楽器のせいにしちゃうし。どうして引退した先輩みたいに上手く吹けないのかなぁ……」 なつの声は、だんだん震えて小さくなっていった。私より少し前を歩いているなつの手は、ぎゅっと握られ震えていた。 「部活、行きたくないなって。自分の楽器を見るのも嫌なの」 なつは、声の震えを悟られないためか、早口にそう言った。 私は、いつも楽しそうに楽器を吹くなつが部活に行きたくない、と言ったことに驚いた。 それに、こんな弱気ななつを見るのは初めてだった。 今にも消えてしまいそうな背中にそんなに重い楽器を背負って、壊れてしまわないかと不安になった。
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