2人が本棚に入れています
本棚に追加
正直、私には吹奏楽のことはわからなかった。
なつに何か声をかけたかったけど、何をいえばいいのかわからない。
そのまま、息苦しい沈黙が続いた。
その代わり、私は自分の言いたいことをまとめる十分な時間を得た。
私は1度深呼吸をしてから、先を歩くなつの背中に語りかけた。
「……この前の文化祭、なつ1人で吹いてたとこあったじゃん。私、そこめっちゃ好きでさ。綺麗だなぁって。すごいなぁって思ってた」
なつは一瞬ぴくっと顔を上げた。
「無理する必要はないと思うの。できない時だってあるし。でも、私はまたなつの音聞きたいから、良かったら続けて欲しいなって。なつのファンとして思うよ。もっと自信持って」
なつは立ち止まって肩を震わせていた。
でも、さっきとは違う震えだった。
「ファンって何?大げさだな〜ふふっ」
なつはくるりと振り返って、嬉しそうな笑顔でそう言った。
「そっか、うん、でもそうだよね」
なつは空を見上げた。
空にはもう星が光っていた。
最初のコメントを投稿しよう!