げんじつ

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げんじつ

はなやかなざんがいの中、ワニのようにのそのそ歩く。 カゲのごとく夜の海をさまよい、ようやくたどりついた。 今日はたのしいパーティ。 ボクらは少しおくれて食事をはじめる。 皿にのこったパンを集める。 皿にあまった肉をくらう。 皿にはみでるやさいをむさぼる。 皿につまれたデザートを飲む。 ボクらはお金がない。 どれだけ働いても、すぐになくなっちゃうから。 ボクらはお金がない。 どれだけ働いても、すぐになくなっちゃうから。 お金だけがないんだ。 生きるために考えるのうみそも持ってる。 生きるためにわるいことする勇気も持ってる。 生きるために動くハートも持ってる。 それだというのに、お金だけがまるで足りやしないんだ。 ボクらはカゲにひそむワニ。 こっそりしのびこんで、パーティのざんがいをかたづける。 そうでもしないと、明日を生きられない。 女の人がじっとボクらを見ていたけれど、なんということはない。 その人は自分の夕飯をネコにこっそり与えていた人だ。 だから、お金がないワニをみのがしてくれるはずだ。 ほら、ごらんよ。なにもいわずに、家の中に入っていった。 ボクらはパーティの残り物をあさる。 そうでもしないと、明日を生きられないから。
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