神域にて

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 今、僕たちがいる鳥居の先にある神社は、神主(かんぬし)不在のいわば無人の小さな神社だ。  境内(けいだい)に入ってしまえば、人目をはばかる必要がほとんどない。  神域全体がこんもりとした(もり)に囲まれているので、程よく外部からの視線を(さえぎ)ってもくれる。 「とりあえずここじゃ落ち着かないし……上行こう」  僕の問いかけに黙り込む葵咲(きさき)ちゃんに、神社の石段を指さす。  声音こそとても穏やかに語りかけているけれど、彼女は僕の怒りを肌で感じ取っているはずだ。  有無を言わせず彼女を参道のほうへ押しやると、逃げられないよう数段後ろについて石段をのぼる。  下から彼女を見上げる形になるので、見るとはなしに葵咲ちゃんの臀部(でんぶ)から爪先(つまさき)にかけての美しいラインに目がいった。  彼女が今日はいているのは黒のハイソックスだ。上部に、王冠のような刺繍がワンポイント入っている。ぼんやりと靴下を眺めていたら、下着は何色だろう?とか思ってしまった。 (重症だ……)
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