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すると、新垣部長はいきなり立ち上がった。
ああ、やっぱりあきれたのか。
帰ってしまうのか。
期待した自分が馬鹿だった。
やっぱり私のやってることは間違ってたかな。
そう思ったら涙が止まらなかった。
さっき網にのっけた肉はとっくのとうに焦げている。
焦げたにおいが少し鼻を刺激した。
私も帰ろうか、そう思った。
でも、そのとき、
「頑張ったな」
すぐ隣から声が聞こえた。新垣部長の。
驚いて隣を見る。
立ち上がったのは私の隣に、来るため?
そして新垣部長はおもむろに私を抱きしめる。
「どうし、て、帰らないんですか? あきれ、ないんですか」
「帰る? 泣いている好きなやつおいて帰る馬鹿いないでしょ。」
え、今、告白されたの? 私の聞き間違いかな。
戸惑う私を無視して新垣部長は続ける。
「もう、無理しなくていいから。お前が優秀なのは俺がよく知ってるから、自分で自分の価値を下げるんじゃない」
優しく私の頭を撫でる新垣部長。手は、すごく暖かかった。
私は泣きすぎて顔がひどいことになっていた。
でも気にする余裕がなくて部長に甘えて、縋り付いて泣いた。
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