秘密

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「なんのことだ。」 男にそのことが、悟られないように、落ち着いた声で話す。 「何をって、そんなの決まっているでしょう?」 「貴方がたが、犯した罪、そしてこれから起こそうとしている罪を、ですよ。」 俺はその言葉を聞いたときに確信した。 この男は、知っている。全てを… 俺ではなく、昔、人を殺したのが妻だということを・・・ 俺達が、おばあちゃんのほんとうの家族ではなく、遺産のありかを聞き出し、盗もうともくろんでいることを・・・ 男は、眼鏡を外し、顔を剥がした。いや、正確には、顔に貼られていたマスクを外したのだ。 そして男の素顔が明らかになった。 その顔をみたとき叫びたくなった。 その顔は、俺がよくみていた医者の羽馬の姿だったからだ。 「では、これからもどうぞよろしくお願いしますね。塩川さん。」 目の前で、いつもの聞きなれた声で、医者の顔をした悪魔がにやりと微笑んだのだった。
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