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EP0.5
「眼鏡くーん」
正に屋上から飛び降りようとしたとき、翔はその、のんびりした声に振り向く
のんびり屋上の給水タンクに続く段で昼寝をしてる男が居た。
「君、死のうとしてるのかい?」
初夏の風が涼やかに頬を撫でていく
「そ、そうだよ。止める気なら無駄だよ?」
震える声で翔が言う。
ククク、と不気味な笑いを結は浮かべた。
「おかしいねぇ、初対面の僕に止める権利も義理もない。そんな言葉が出るってことはまだ、君は自分の今捨てようとしている命にまだ価値が残ってるって思ってるんだ。変なの。」
クククと結は嗤う。
(いやいや、お前のが変だろ…)
「まぁ、いいや、ここで会ったのも何かの縁か。君に俺の最後のお別れを言うとするよ」
冠雲 初夏の芽吹き 澄んだ青い空
「君、死ぬのが目的なら残念だけど死ねないよ」
ピクっと翔の足が止まる
「なんでそんなことわかるんだよ」
「怪しいことを言うよ?僕は縁が見えるんだ」
よいしょっと寝ていた男はやっと起き上がる
「君の縁が天国と繋がってない。まぁ、5階だし、そこそこの高さだ、大怪我、後遺症が残ったり、そんな程度の怪我ならできる。だけどそれは君の目的じゃないんじゃないか?」
何を言っているんだこの男は
「縁が見えるなんて…そんな馬鹿な話」
なーんか君おもしろそうだなぁ、と結は翔に興味を持った。
ツカツカと翔の近くに行く。
「なんだ、結局止め…痛て…」
グイッと結は翔の手首をを引っ張る
そして、左手でチョキの形を作る。
「お前、何する…って言うかなんで小指無いんだ?」
ふふっと結は笑う。
「まぁまぁ、これが、君をいじめるヤツらとの縁」
チョキ
ハサミで本当に切ってるような音がする。
「ご両親の歪んだ愛の縁、こりゃ重いねぇ」
チョキ
「なーんだ、死ぬ理由こんなもんか、つまんない」
(こいつ、なんで俺の死ぬ理由がわかったんだ?)
「別に、不幸の重さなんて比べらんないもんだろ、俺にとっては大問題だったんだよ」
(あれ?過去形になってる…死にたい気持ちが失せてしまっている)
ふーん
「まぁいいや、君の死にたい理由の縁は全部切ったよ」
「その上で死にたいならご自由に…」
そう言って男は屋上から出ていった。
(なんだったんだ??)
屋上の柵の外にいる自分が心底馬鹿らしくなって空を見上げた
青いなちくしょう
なんなんだよあいつ…
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