いかがわしい仕事

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 その女の趣味は読書。  名を由紀子と言って女版文学青年といった形相で他を寄せ付けない雰囲気を漲らせて公園のベンチに座って単行本を読んでいる。  その手にする物は漱石著それから。  主人公の代助に共感し、高等遊民に憧れ、パンの為の労働でなく労働の為の労働をしなければいけないと感慨深げに思ったりしている。  そこへ由紀子とは比べ物にならない位、美しい女がひょっこり現れて、「面白いですか?」と不意に尋ねて来た。  読書に没頭していた由紀子は、びっくりして顔を上げた。 「面白い?」と再度問われた由紀子は、背景の花畑を引き立て役にするかのような花顔に対し劣等感に苛まれながら首肯した。
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