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「あ~、ダルかった……」
式が終わって教室へと戻る途中の廊下でそんなことを凛ちゃんが呟く。
「そう?私は身が引き締まる思いだったよ」
私の返答に、凛ちゃんは「由菜は相変わらず真面目だねぇ」と返してくれる。
「それよりさ、由菜はもう部活何に入るか決めた?」
「部活かぁ~。オーケストラ部にしようかなって思ってるんだけど……。凛ちゃんは?」
私の問いかけに、凛ちゃんはフリフリと右手を振りながら、
「オーケストラはパス。だってここのオーケストラ部って厳しいって有名だもん。私はどっか緩い部活を探すよ」
そんな話をしているとあっという間に教室へ着く。凛ちゃんはまたね、と言って自分の席へと戻っていった。
私も自分の席へと着く。そして生徒たちが全員席についたのを見届けた遠山先生が壇上で私たちを見回した。
「え~、これから君たちはこの学校の生徒として生活を送っていくわけですが……」
先生はそこで一度言葉を切る。クラスメイトたち全員が、先生の次の言葉を待っている。
「とりあえず、元気に過ごしてください」
先生はそう言うと、では、教科書を配ります、と言い先頭の生徒にその列の分の教科書を渡し始めた。
「ページの抜けや乱丁がないか皆さん、確認してくださいね」
教科書を受け取った私は、その分厚さに驚いてしまう。小学生の頃とは比べ物にならない分厚い教科書。これが、中学生なのか。改めて自分が今日から小学校とは違う世界に来たのだと意識させられる。
全ての教科書を受け取った私は、その重さに驚く。これを毎日持ってこれから学校に通うことになるのだ。
「では、明日からよろしくお願いしますね、皆さん」
先生のこの言葉で、私たちの入学式は終わった。私は教室の後ろにずっと立っていたお母さんの元へと急ぐ。
「お、重い……」
教科書で重くなったカバンを肩にかけ、お母さんにそう言う。お母さんはふふっと笑うと私のカバンを持ってくれた。
「凛ちゃんと同じクラスになれて良かったわね」
お母さんにそう言われ、私の頬は自然とほころんだ。
「由菜!また明日ね!」
帰り際の教室で凛ちゃんが私に挨拶をしてくる。私もまた明日、と返すと凛ちゃんは教室を出ていくのだった。
「じゃあ、帰りましょうか、由菜」
「あれ?お兄ちゃんは?」
「佑希なら車で待っているわよ」
さぁ、帰りましょう、と言うお母さんに促され、私はこれから過ごす教室を後にするのだった。
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