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その日の夕方。
私はお母さんの夕飯作りの手伝いをしていた。お兄ちゃんはリビングのソファに座って何やらずっとスマホと睨めっこをしている。気になった私はお兄ちゃんに近付いて声をかける。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「おぉ、由菜」
私に気付いたお兄ちゃんはすっとソファの隣を空けてくれた。私はその空いたスペースに腰を下ろす。お兄ちゃんは私が隣に座ったのを確認すると、自分のスマホの画面を見せてくれた。
「求人情報サイト……?」
「そうだよ」
お兄ちゃんはにっこりと笑うと、ずっといいところがないか探していたんだと説明してくれた。
大学生になったお兄ちゃんは、髪を茶色に染めてパーマを軽くあてている。身長は177センチ。大きくて、カッコいいお兄ちゃんは密かに私の自慢だ。そんなお兄ちゃんは高校を卒業すると同時に少しずつ変わってしまったように感じた。なんだか、小さい頃からずっと一緒だったのに、大学生になった途端にどこか遠くへと行ってしまうかのような錯覚を覚えた。
「お兄ちゃん、変わったよね……」
そんな私の不安な気持ちがふと口をついて出てしまう。
「お?どうした由菜。突然……、あ、分かった!お兄ちゃんがいなくなりそうで寂しくなっちゃたんだろう?」
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