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ニヤニヤ笑いを浮かべながらお兄ちゃんはさらっと図星をついてくる。私は突然恥ずかしくなって慌てて首を振る。
「そ、そんなことない!」
「分かった、分かった」
お兄ちゃんはニヤニヤ笑いをやめると、私の頭をぽんぽんとしてくれる。これは昔からのお兄ちゃんの癖だ。私の頭を撫でながら、お兄ちゃんは優しい声音で続けてくれた。
「大丈夫。お兄ちゃんはいつでも、由菜の味方だからな」
その優しい声音に、私は恥ずかしさを感じながらも心地よさも感じてしまうのだった。
「ほら、2人とも。お夕飯出来たから食べちゃいましょう」
私がうつむいて言葉が出てこなかった時、お母さんが私たちを呼んだ。
「はぁい!」
私は恥ずかしさからお兄ちゃんの傍を離れると、すぐに夕飯の席へと着くのだった。
「母さん、父さんは今日も遅いの?」
夕飯が終わり、テレビを観ながらお兄ちゃんがお母さんに問いかけている。
「そうみたいよ~?どうしたの?佑希」
「いや、由菜の入学式の日くらい、早く帰ってくればいいのになって思っただけ」
お兄ちゃんは少し機嫌が悪そうな口ぶりで言う。
お父さんは小さい頃から家を良く空けていた。小さい頃はそれが寂しくて寂しくて、良くお兄ちゃんに甘えては泣いていたけれど、私ももう中学生なのだ。今はそんなことはしていない。
それに、お父さんが私たち兄妹のために頑張ってくれているのも理解しているつもりだった。
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