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ガチャ……。
そんなことを考えているとリビングの扉が突然開いた。顔を向けると、
「お父さん!」
「ただいま」
仏頂面のお父さんが立っていた。
「父さん、今日は遅くなるって……」
「あぁ、早く切り上げてきた。由菜、佑希」
お父さんが私たちの名前を呼びながらゆっくりと近付いてくる。
「入学、おめでとう」
相変わらず仏頂面なお父さんは、カバンの中から何かを取り出すと、そう言って私たちに手渡してくれる。私が驚いてお父さんの顔を見ている横で、お兄ちゃんが渡された包みを開いていた。
「おぉっ!これっ!父さん、ありがとう!」
お兄ちゃんが隣で歓喜の声を上げている。私がお兄ちゃんの手元を覗くと、大人っぽいデザインの皮財布があった。
「由菜、お前も開けてみろよ」
笑顔のお兄ちゃんにせっつかれ、私は自分が持っていた包みを開いた。すると中からは図書カードが現れた。
「2人とも、しっかり勉強しなさい」
お父さんはそう言うと食卓へとスーツの上着を脱ぎながら向かうのだった。
「そうだ、由菜。俺からも入学祝い」
お兄ちゃんはそう言うと自室へと向かう。私は驚いてその場から動けずにいると、戻ってきたお兄ちゃんが包みを渡してくる。
「開けてみな」
優しい声音のお兄ちゃんに促されるようにゆっくりと包みを開いていくと、中からは音楽プレーヤーが姿を現した。
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