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「──それで? おまえには聞きたいことが山程ある」  置かれたコーヒーをひと口飲むと、男は真っ直ぐにリンを見た。 「……その前に、僕も聞きたい。あんた、誰なんだ」 「──仁だ」 「ジン?」  頷いた仁は、少し口元を緩め、ゆっくりと目を細めた。 「おまえは覚えてないだろうが、俺はおまえに会ったことがあるんだ、リン」 「っ……」 (知らない。僕は会ったことない……)  仁がコーヒーをもうひと口飲むのを見て、リンも落ち着こうと、置かれたカップに手を伸ばした。  ホットミルクを飲むリンに、少し安心した様子を見せた仁は、言葉を続ける。 「隠していてもいずれ分かることだから、先に言う。おまえがさっき、あの教会で置き去りにしてきた哀れな花婿は、俺のボスだ」 「!!」  一気に全身の毛が逆立った。  ガチャン! とカップが激しい音を立てると、リンは座ったままの体勢で後退る。が、すぐに狭い部屋の壁に背中が当たり、焦りが滲み出た。  袋の鼠とは、まさにこのことではないか! (やっぱり、ついて来たのは間違いだったんだ!)  全身で警戒を発するリンの体は、小さく震えた。
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