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その様子に、仁は肩を竦めて苦笑いを零す。
「……落ち着けって。捕まえるつもりなら、とっくに捕まえてる。おまえをどうこうするつもりはないよ」
──そんなこと、信じられない。
リンは逃げ道を探すように、すりガラスの窓と入口のドアを、ちらちら見た。
窓は、もしかしたら開かないかもしれない。向かうなら入口のドアがいいだろうか。
「……参ったな。どう説明すりゃいい」
仁はため息をついて、頭をガリガリと掻く。そして、再び真っ直ぐにリンを見た。
「俺はおまえの味方だ。初めて会った時から、そう決めてるんだよ。……おまえの事は、俺が守ってやろうって」
そして少しだけ眉を下げ、ぽつぽつと話をした。
「何度か会ったことがあるんだ、リン。おまえはいつも眠ってた。ベッドの上に、丸くなってな……体が弱いってマリカさんに聞いて、心配してた──このまま目を覚まさなかったら、どうしようって。一度だけ、頭撫でてたらうっすら目を開けたんだがな。覚えてないよな」
「………」
全く、覚えていない。
「でも今日、走ってる姿見て安心したよ。体、良くなったんだな」
その目が本当に優しそうに細められるのを見て、リンは少し警戒を緩めた。
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