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「ほんと、マリッジブルーで『結婚をやめる』って言い出した時は、どうしようかと思ったよ」 「……ごめんなさい。でも不思議ね、教会に入った途端、嘘みたいに幸せな気持ちになったのよ。あんなに悩んでたのに」 「思い直してくれて嬉しいよ、奥さん。さぁ、少し下で休もうよ、くたくただ」 「ふふっ、そうね、お茶を淹れるわ。──あら? これは何?」  通り過ぎようとした机の上に、白い粉の入った小さな袋を見つけて茉莉香がつまみ上げ、『木天蓼』の文字をしげしげと眺めた。 「? 読めないわ。……モク、テン……?」 「ああ、それ。モクテンリョウって読むんだ。マタタビだよ、うちの商品」 「そうなの、難しい字書くのね。覚せい剤かと思っちゃったじゃない」 「そんな訳ないだろっ。その下に書いてある添加物の獼猴桃(ビコウトウ)はキウイのことだよ。でもうちのジンジャー、マタタビに反応しないんだよね。それ、キウイ成分多めの試作品なんだ。今度、凛太郎に試していい?」 「いいけど……副作用とか出ない?」 「ははっ、大丈夫だよ」  仲の良さそうな2人の声が、そのまま階段を降りて行った。  大きくとられた窓の側、陽だまりの中で、ジンジャーは凛太郎のピンク色の鼻をペロリと舐める。  薄目を開けた凛太郎は、優美な尻尾をふわりと揺らめかせ── 「にゃあ」  と、ないた。       (おわり……エンドロールへ)
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