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「初めは良かったんだ。マリカもすごく幸せそうで、『好きな人ができた』って、『付き合うことになった』って嬉しそうに話してたんだ。マリカに大切な人ができて僕も嬉しかったし、2人のことは応援してた。結婚が決まった時だって、そうだ。心から祝福したよ、マリカの幸せは僕の幸せなんだから。でも……」
リンは俯いて、ぎゅっと自分の手を握る。
「……春先くらいから、目に見えてマリカの元気がなくなっていった。なかなか理由を言ってくれなかったけど、ようやく聞き出したら、あいつが原因だった」
「……原因って?」
「っ」
リンは、キッと仁を睨み付けた。
「あんたのボスは、人でなしだ。マリカは毎晩泣いてたよ、『結婚したくない』って。『婚約を解消して欲しい』って、『何度頼んでも聞いてくれない』って! マリカはあいつに騙されて、結婚の約束をしたんだ」
リンは悔しそうに唇を噛んだ。
「マリカは日に日に落ち込んでいくし、僕にはどうすることもできなかった……それで、今回の計画を思いついたんだ」
「計画?」
仁が静かに聞き返す。
「ああ。今日が何の日か、知ってるだろう?」
「……ボスとマリカさんの、結婚式」
「そうだよ。婚約を解消してくれないなら、望み通り結婚式を挙げてやる。──相手は、僕だ」
「っ!」
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