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1人になったリンは、途端に静寂に包まれる。
仁が出て行ったドアを眺めていると、思い出したように今の自分の現状がのし掛かってきた。
リンは、仁にさっき言われたことを、今更ながらに考える。
(これから……どうしようか)
もう、あの家には戻れない。
今頃、あの男が手を回しているだろう。この計画を立てた時点で、覚悟はできているつもりだった。
(そっか、もう帰る家もないんだな……)
マリカを逃がすことで一杯一杯で、先のことなんて考える余裕がなかった。
リンの視線が、おのずと手元に落ちる。
(ここを出たら、どうしよう……)
リンは、すっかり冷えてしまったミルクをこくりと飲む。冷たい液体が喉を通る感触に、心細さがじわじわと込み上げてきた。
(……マリカは今頃どうしてるだろう。ちゃんと逃げられたかな)
さっきまでの興奮の反動からか、うっかり涙まで込み上げそうになり、リンは頭をぶんぶんと振った。
(──いけない! しっかりしなきゃ)
両手で自分の頬をぱしんと叩く。
自分の面倒くらい、自分でみられる!
マリカさえ無事なら、それでいい。
自分に言い聞かせるように深呼吸をすると、ドアが開いて仁が戻って来た。
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