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『……リン、どうしよう。私……結婚を決めたのは間違いだったわ。あの人は私のことなんて、愛してないのよ』 『マリカ、マリカ。泣かないで……僕がついてる。大丈夫だよ』  リンは、ぽろぽろと涙を零すマリカの手をぎゅっと握る。 『私がバカだったわ。あの人は婚約を取り消してくれないの……もう手遅れよ』 『マリカ、僕に任せて。そんな奴と結婚なんて、絶対にさせないよ』 『リン! リンだけが私の味方ね。リンは心の支えだわ』  マリカが縋るようにリンに抱きつく。  ……ちょっと苦しいが、それだけマリカの不安が大きいことの表れだ。リンも宥めるように抱き返す。 『僕の方こそ、いつもマリカに支えられてきたんだ。今度は僕が助ける番だよ。ね、泣かないで聞いて欲しい』 『私はもうだめだわ……』  ──ああ、これは夢だ。  最近のマリカはいつも泣いてばかりいた。  マリカには、いつも笑っていて欲しいのに。
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