95人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
『……リン、どうしよう。私……結婚を決めたのは間違いだったわ。あの人は私のことなんて、愛してないのよ』
『マリカ、マリカ。泣かないで……僕がついてる。大丈夫だよ』
リンは、ぽろぽろと涙を零すマリカの手をぎゅっと握る。
『私がバカだったわ。あの人は婚約を取り消してくれないの……もう手遅れよ』
『マリカ、僕に任せて。そんな奴と結婚なんて、絶対にさせないよ』
『リン! リンだけが私の味方ね。リンは心の支えだわ』
マリカが縋るようにリンに抱きつく。
……ちょっと苦しいが、それだけマリカの不安が大きいことの表れだ。リンも宥めるように抱き返す。
『僕の方こそ、いつもマリカに支えられてきたんだ。今度は僕が助ける番だよ。ね、泣かないで聞いて欲しい』
『私はもうだめだわ……』
──ああ、これは夢だ。
最近のマリカはいつも泣いてばかりいた。
マリカには、いつも笑っていて欲しいのに。
最初のコメントを投稿しよう!