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(僕の話? ああ、僕の髪のことを言ってるのか──)
仁にふわりと髪を撫でられ、リンはようやく目を開いた。
「ん……僕の髪、変?」
「リン、起きたのか。……話、聞いていたのか?」
「ううん……ちょっとだけ」
ふわぁっと大きな欠伸をして、ぐぐっと伸びをすると、リンの黄金色の豊かな髪がふるっと揺れた。
ウェーブのかかった見事なゴールデンブロンドは、腰の辺りまで届いている。
マリカと唯一違うのは、この髪の色かもしれない。マリカの髪は自分より少し濃くて、明るいブルネットだ。でもそれだって、ベールを被れば判らないくらいの差だった。
「おまえの髪がきれいだなって、話してたんだよ」
仁がふと目を細める。
マリカも、髪のことはよく褒めてくれた。
自分でできるからいいと言っても、毎日のように、目の荒い柔らかいブラシでするすると手入れをしてくれて、とても気持ちが良かった。
リンはもう一度欠伸をすると、仁を見上げた。
「僕はあんたの髪、きれいだと思うよ。漆黒だね」
こういうのを、濡れ羽色っていうんだろうな。艶やかな黒髪に手を伸ばし、するりと撫でる。
「……すっかり目が覚めたようだな、リン。行くぞ」
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