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(フン、いい気味だ)  流れてきた、緑を含んだ外の空気を吸い込むと、頭の中がすっきりとした。  目をぱっちり開くと、溜まっていた涙が蒸発する。  開かれた扉に向かって一歩踏み出すと、あんなに苦しかったのが嘘のように体が軽くなった。 「──待て、どこへ行く?」  ──外に出たい。  それはもう本能のように、全身を駆け巡る。  無言のまま侮蔑の表情をちらとくれてやると、自分を掴む男の手を振り払って、一気に走り出した。 「きゃあ!」  参列していた女性が悲鳴を上げる。  白いドレスが翻る。 「待て!」 「待って! 戻って!」 「逃がすんじゃないっ、──おいっ、捕まえろ!」  祭壇から追って来た男が叫ぶ。 (ほら、本音が出た! 花嫁に向かってなんて言い草だ)  こんな男と、マリカを結婚させる訳にはいかない。  自分に纏わり付く幾つもの手を振り切って、転がるように光の中に飛び込んだ。 「!!」 (眩しいっ!)  一瞬で目の瞳孔が縮む。  ──扉の向こうは、見たこともない世界だった。
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