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それもその筈だ。
自分は閉じ込められて、無理矢理ここに連れて来られたのだから。
──マリカの代わりに。
入れ替わった自分をマリカと信じ込ませ、まんまと騙されたこの男は、嫌がる自分の目を塞ぎ車に乗せて、ここまで連れて来たのだ。
外に出て全く知らない場所に一瞬怯んだが、自分に伸びる何本もの手がすぐ後ろに迫っているのを察し、足下の緩やかな石段をひと息に駆け下りる。
「待ちなさい!」
「逃げるぞ、捕まえろ!」
恐ろしい怒声を背後に受けながら、ここで捕まったら最後だと必死に走る。
(何ここ、広いっ)
下りきった石段の先には、美しい庭が広がっていた。
白い小石を敷き固めた小径の両側に、薄青や桃色の紫陽花が咲いている。他にも、白や黄色の花がたくさん揺れている。花の隙間から覗く向こうに見える緑は、芝生だろうか。
絵本にでも出てきそうな美しい庭をゆっくりと眺める余裕などある筈もなく、景色を目の端に流しながら、息もつかずに駆け抜けてゆく。
白い小径の遠い先には、門らしきものが見えた。
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