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(出口だ!)  一心に走り抜け、辿り着いた小径の先に見えた門扉は、開かれたままになっていた。 「っ!」  走ってきた勢いのまま飛び出すと、いきなり広い道路に出た。  急に変わった景色に、目を見開く。  目の前をびゅんびゅんと乱暴に行き交う車に、足が竦んだ。 (っ、怖がってる場合じゃない──どっちに行けばいいっ? 右か、左かっ……)  思わず立ち止まって、きょろきょろと辺りを見渡すが、見たところで分かる筈もない。 (ああっ、どうしたらっ……)  このままだと、捕まってしまう。  この際どっちでもいいから進もうとしたその時──突然、目の前に黒い影が飛び込んできて、素早く自分を振り返った。  鋭い目がキラリと光る。  その殺気立った気迫に、思わずぎょっとして固まった。  スリムな体躯に、全身黒ずくめのこの格好は── (こっ、殺し屋っ!?)  いつかマリカと一緒に見た、スパイ映画のスナイパーが、そこにいた。
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