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「こっちだ!」
スナイパーは、そう言って自分に手を差し伸べる。
「だっ、誰っ!?」
「いいから、こっちだ。捕まりたくないんだろう?」
手を差し伸べるスナイパー……いや男は、もどかしそうに急かしてくる。
「俺はおまえの味方だ、リン。ほら、早く!」
(何で、僕の名前っ……)
信じていいのだろうか。
もしあいつの手下だったりしたら……考えるだけでも恐ろしい。
迷っている間にも、背後に足音が聞こえてくる。
「いたぞ、こっちだ!」
「逃がすな!」
近付いてくる怒声に戦慄を覚えたリンは、思わず男の元に駆け寄った。
側に来たリンに、男は口の端を上げてニコリと笑う。
その表情が思いがけなくて、リンの心臓はドキリと脈打った。
「大丈夫だ、この辺の地理は熟知している、逃げ切れる」
「っ……」
男は、リンの手をとって走り出す。
一抹の不安を感じながらも、今は追っ手から逃げることが先決だと、言われるままについて行く。
「どこだっ、どこに行った!?」
「いないぞっ」
「捜せっ、まだ近くにいる筈だ、絶対に見つけろ!」
恐ろしい声はどこまでも追って来るようで、リンは耳を塞ぎながら、必死に男と走った。
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