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リハビリ室まで徒歩で移動するらしい。
「先生は慈愛大学の三年生でしたよね。私と同学年だ」
「そうですか。でしたら『先生』はやめてくれませんか。まだ実習生だし」
「そう?じゃあ『先生』がダメなら名前で」
実習生の名札には『村田秀一』と書いてある。
「……シューイチ」
まさかの名前呼び!
そこは苗字でいいのでは?
「違う。よく間違えられるけど『ヒデカズ』だ。周りのやつは大抵『ヒデ』と呼んでくるけど」
「分かった『ヒデ』だな。私のことは『タケル』で」
リハビリが始まってからも建先輩のお喋りは続く。
「ところでヒデ。好きな人はいるのか?」
ガンガラガッシャン!
実習生が近くに置いてあった器具やらなんやらをひっくり返してしまったようだ。
「なっ、なんでそんなこと……」
あわてて器具を拾い集めている姿が挙動不審である。
「いやなんとなく。もしかして同じ大学にいるとか?」
バサバサバサバサ!
今度は書類を派手にぶちまけたようだ。
かなり広範囲に散らばったようで、私も拾い集めるのを手伝う。
「建殿!村田先生をからかってはいけませんよ」
「からかったつもりはないんだけどな」
拾った書類を手渡すと、実習生が私をマジマジと見ながら言った。
「確かあなたはタケルの後輩でしたよね。さっき『建殿』って……」
そう、私は建先輩のことを『建殿』と呼んでいる。
それには深い訳があるのだ。
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