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「そうだよ、私と愛祐付き合うことになったの。驚いた?」  クラス中に悲鳴と歓声と、とにかく大きな声が響いた。い、言うの恥ずかしい……。あの子を騙すためなら仕方ないか。でもあの子めちゃくちゃ可愛いじゃない。こんな私相手に引き下がらなそう。  そんな風に考えていると、彼女が険吞な雰囲気をかもし出しながら私たちに近づいて来る。 「……ねえふたりとも、放課後あの桜の木の下に来て。絶対だから」  そういうと、そそくさと立ち去っていった。いきなり来ていきなり帰って行ったなぁ。きっと後で何か言うんだろう。でも、ふたりでって言われてよかった。ひとりだったら、きっと怖くて行けなかったから。 「ねえ月景、放課行かないといけないとみたいだね」 「あんなやつのいうこと聞かなくていいんだけどなぁ。まあ行かなかったら後々面倒だし、今日で離れてもらったらお前も俺もハッピーだしな」  ああいう子は絶対今日には引き下がらないと思う。引き下がるとして、それは少なくとも一週間は必ずかかるはず。頑張らないと、本当にこのまま5月まで行ってしまう。その間に優弥の私への思いがどう変わるかも分からないし、もしかしたら優弥も誰かと付き合ってしまうかもしれない。まあ今どう思われているかも、優弥に好きな子がいるかも知らないけれど……。  もうすぐ一限目が始まる。けれど放課後が怖くて、なかなか授業に身が入らなかった。
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